2009/03/11
麗子像で知られる大正期を代表する画家ー岸田劉生(1891−1929年)は、当時主流であった印象派風の明るい色彩を用いた表現には迎合せず、強烈な自我を礎に独自の写実を探求していきました。試行錯誤を経て生み出された作品は、風景・肖像・静物とジャンルを問わず高い評価を得ています。 本展は劉生の没後80年を記念し、肖像画に絞り約80点を展覧するものです。なぜなら劉正は肖像画においてこそ独自の写実を切り開き、深めていったといえるからです。ほぼ同じ構図で繰り返し描かれた肖像画、および「岸田の首狩り」と言われるほど家族・知人を次々とモデルにして描いた肖像画の変遷をたどることで、自己の探求とともに他人の存在に深く魅せられていった作家の孤高の姿が浮かび上がってきます。 劉正が表現したかったのは、対象の奥にある「内なる美」「在るということの不思議な神秘さ」「無形の美」でした。ぜひこの没後80年という機会に劉正が描いた「顔・顔・顔・・・」に向き合っていただき、作家が肖像画をこえて見つめたものを感じ取っていただければ幸いです。 |