美術展の企画

ART EXHIBITION
文化庁新進芸術家海外研修制度の成果

19th DOMANI・明日展 PLUS
「ワームホール・トラベル –ゆらぐ時空の旅–」

DOMANI・明日展 PLUS×京都芸術センター
会期
2016年9月17日(土) ~ 2016年10月16日 (日)
会期中無休
時間
10:00-20:00
10月1日(土)は「ニュイ・ブランシュ 2016」のため
22:00まで延長回廊
料金
無料
会場
京都芸術センター ギャラリー北・南
協力
アート・ベンチャー・オフィス ショウ
主催
文化庁、京都芸術センター
後援
ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川

文化庁は、将来の日本の芸術界を支える人材の育成のため、若手芸術家が海外の大学や関係機関で行う研修を支援する「新進芸術家海外研修制度(旧・芸術家在外研修)」を1967年度から実施しており、まもなく半世紀を迎えようとしています。また、そうした研修の成果発表の機会として1998年から東京で「DOMANI・明日展」を開始し、今年で19回を数えます。この国立新美術館での大規模なグループ展に加えて、より小規模でテーマ的な展示の機会として、一昨年度より「DOMANI・明日展 PLUS」を実験的に開始しました。今回、東京以外で初めて、京都芸術センターでの開催の運びとなりました。
戦前に設立された小学校を改築して活動を続ける、京都の街中のアートセンターでの開催にあたり、「旅」というテーマを設定しました。生まれた場所、学び育つ場所、永遠の眠りにつく場所…、人は幾つもの場所を旅するように生きるとともに、わたしたちを取りまく事物や現象、情報、諸制度は刻一刻と変転し、積みかさなる壮大な歴史的時間のはざまを旅しているといえます。
本展では、この制度による海外研修をはじめ、さまざまな国や地域を移り住みながら制作活動を行ってきた4名の作家たちの作品を展示します。移りゆく気配の痕跡によって時の存在を露わにする宮永愛子、光や音、動きを使って身の回りにひそむ一瞬の美や不可思議をとらえる小金沢健人、日用品の人工的な色彩や形態を再構成して生命体や宇宙の循環を想起させる鬼頭健吾、個人的な体験と歴史的な事実を積み重ねて物語を紡ぎながら隔たる時間と空間をつなぐ長坂有希。既存の表現メディアの境界を超えて、多様な素材を操るかれらは、流れさる時間や変わりゆく事象を、鋭敏なまなざしとユニークな思想でとらえて鮮烈に視覚化します。その作品はまるで「ワームホール」のように、時空のある一点から別の一点へとつながる抜け道をひらき、わたしたちを時空のゆらぎへと誘います。

海外研修を経てステップアップして国内外で活躍する作家たちのグループ展を通じて、この制度の意義を広く社会に報告すると同時に、関西で活動する若い世代がこの制度を知り、積極的に応募をする後押しとなることを願っております

【イベント】

1. アーティスト・トーク
出展作家4名が、これまでの旅の経験や制作活動、展示作品についてお話します。
[日時]9月17日(土)15:00-16:30
[会場]フリースペース
[料金]無料
[定員]先着100名(事前申込不要)

2. パフォーマンス
出展作家の長坂有希が出展作《手で掴み、形作ったものは、その途中で崩れ始めた。最期に痕跡は残るのだろうか。01_アンガス》のストーリーテリング・パフォーマンスを行います。
※所要時間:約30分
※詳細は、後日、ウェブサイトやフライヤーでお知らせします。

3. ワークショップ
この制度によるアメリカ研修をはじめとして、海外での滞在制作および展示発表の経験が豊富で、現在は京都に拠点をおく池田剛介によるワークショップ。アーティストの制作過程や思考、手法について体験的に学びます。
※詳細は、後日、ウェブサイトやフライヤーでお知らせします。

《出品作家》
・宮永愛子(みやなが あいこ)
1974年京都市生まれ。1999年京都造形芸術大学芸術学部美術科彫刻コース卒業後、2008年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。2007年文化庁新進芸術家海外研修制度によりエジンバラに滞在。ナフタリンや塩、陶器の貫入音や葉脈を使ったインスタレーションなど、気配の痕跡を用いて時を視覚化する作品で注目を集める。2013年「日産アートアワード」初代グランプリ受賞。主な展覧会に「日産アートアワード2013」(BankART Studio NYK、神奈川、2013年)、「house」(ミヅマアートギャラリー、東京、2013年)、「宮永愛子:なかそら―空中空―」(国立国際美術館、大阪、2012年)、「景色のはじまり―金木犀―」(ミヅマアートギャラリー、東京、2011年)、「あいちトリエンナーレ」(愛知芸術文化センター、2010年)、「漕法」(京都芸術センター、2008年)など。

・小金沢健人(こがねざわ たけひと)
1974年東京生まれ。1998年武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業後、1999年よりベルリン在住。2001年文化庁芸術家在外研修制度によりベルリンに滞在。映像、ドローイング、インスタレーション、パフォーマンスと表現領域は多岐にわたる。主な展覧会に「ザ・コンテンポラリー1 われらの時代:ポスト工業化社会の美術」(金沢21世紀美術館、石川、2015年)、「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」(森美術館、東京、2010年)、「小金沢健人展 動物的」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川、2009年)、「横浜トリエンナーレ」(新港ピア、神奈川、2008年)「あれとこれのあいだ」(神奈川県民ホールギャラリー、2008年)、「Dancing in your head」(資生堂ギャラリー、東京、2004年)など。

・鬼頭健吾(きとう けんご)
1977年愛知県生まれ。2001年名古屋芸術大学絵画科洋画コース卒業後、2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科油画修了。2010年文化庁新進芸術家海外研修制度によりベルリンに滞在。日常にありふれた素材を使い、それらのもつカラフルさや、鏡やラメによる反射、モーターによる動きなど、回転や循環を取り入れた大規模なインスタレーション、立体や絵画など多様な表現方法を用いた作品を発表。主な展覧会に「Migration “回遊”」(群馬県立近代美術館、2015年)、「Mono no Aware」(エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク、2013年)、「Artist File」(国立新美術館、東京、2011年)「世界制作の方法」(国立国際美術館、大阪、2011年)、「パブリックスペースプロジェクト」(東京都現代美術館、2007年)、「六本木クロッシング2007:未来への脈動」(森美術館、東京、2007年)など。

・長坂有希(ながさか あき)
1980年大阪府生まれ、2005年テキサス州立大学芸術学部卒業後、2012年国立造形美術大学シュテーデルシューレ・フランクフルト修了。2012年文化庁新進芸術家海外研修制度によりロンドンに滞在。リサーチをベースとし、遭遇した事象の文化、歴史的意義や背景の理解と作者の空想や記憶が混じりあう現実と架空の狭間を行き来する物語世界を作品によって表現する。主な展覧会に「マテリアルとメカニズム」(国際芸術センター青森、2014年)、「Attention Economy」(クンストハレ・ウィーン、2014年)、「Signs Taken in Wonder」(オーストリア応用美術・現代美術館MAK、2013年)、「Zauderberg」(フランクフルト近代美術館、2012年)など。共同プロジェクト「アートとサイエンスのあいだ」や「Baby, I lost my handshoes…」への参加や企画も行う。