近代花鳥画の第一人者である上村松篁は、明治35年(1902)に上村松園の長男として生まれました。幼少から動植物や絵を好んだ松篁は、京都市立美術工芸学校・京都市立絵画専門学校に学び、大正10年(1921)に「閑庭迎秋」で帝展初入選を果たしました。
世界性に立脚する日本絵画の創造を目指して日展を離脱し、山本丘人・秋野不矩らと共に創造美術を結成し、透徹した自然観察をもとにした現代感覚あふれる花鳥画に新境地を拓き、昭和58年(1983)に文化功労者を翌年には文化勲章を受章しました。
本展は、松篁生誕110年を記念して、初期から晩年までの花鳥画の代表作を中心に、これまで紹介されることの少なかった歴史風俗画なども展示し、その芸術の全容と魅力に迫ります。
★みどころポイント★
上村松篁の生誕110年を記念する展覧会に相応しく、見応えのある大作約60点で構成されています。
丹念な筆使いの初期の屏風や軸作品から、転換期、古典回帰、そして晩年の作品においても、見事な大作ばかりで、とても豪華絢爛な展覧会になっています。
なかでも「門外不出」とされている《万葉の春》と《燦雨》の大作2点が出品されているのは、必見です。
花鳥画と凛とした空気感、《万葉の春》のたおやかな人物が、どの作品もいつまでも観ていたいと思わせるような作品ばかりです。
上村松篁の画業の全容を一堂に観ることのできる貴重な展覧会を是非ご覧ください。(河合)
【作品リスト】
●《ハイビスカスとカーディナル》 1964年 松伯美術館蔵
●《閑庭迎秋》 1921年 絹本彩色 六曲一隻 松伯美術館蔵
●《草原八月》 1956年 紙本彩色 松伯美術館蔵
●《緋桃》 1970年 紙本彩色 松伯美術館蔵
●《丹頂(一対)》 1980年 紙本彩色 松伯美術館蔵
他